「引っ越しうつ」の注意点と予防方法

「引っ越しうつ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?引っ越しは見えない部分でストレスを感じていることが多く、肉体的な疲れ以外にも、新しい環境へなかなか適応できないなどの精神的な理由から、うつ症状が出てしまうこともあります。

慣れ親しんだ環境を離れた寂しさや喪失感が理由のこともありますし、誰もがかかる可能性のあるものです。そんな「引っ越しうつ」の症状や注意点、予防方法について紹介します。

「引っ越しうつ」とは?

「引っ越しうつ」はなぜ発症してしまうのでしょうか?その原因や症状、陥りやすい人について、紹介します。引っ越し準備や新しい環境が人に与えるストレスとはどんなものなのか、考えてみましょう。

「引っ越しうつ」になる原因

準備から転居先での荷解きなどに追われ、引っ越しに伴う疲労はかなりのストレスになります。作業に追われているうちは気付かずに淡々とこなしていても、一段落ついた頃に襲ってくる疲労感はかなりのものです。

また、住み慣れた環境を離れる寂しさも大きなストレスになります。作業に追われている間は思いにふける時間もないですが、引っ越しが済んで新しい環境になかなか馴染めない場合などは、前の環境が懐かしく、恋しくなることも多いでしょう。

そして、新しい環境に対する不安や緊張から夜眠れなくなったり、新生活でのルールやパターンに慣れるまでかなり神経を使ったりします。知り合いのいない環境では孤独や疎外感を感じることもあるでしょう。特に関東から関西など、文化圏や方言が違う所では、カルチャーショックを感じることも多いでしょう。

症状

人は何か強いストレスを感じると、身体面・精神面・行動面に変化が出てきます。例えば自律神経が乱れたり、気分が落ち込んだり、過食や食欲不振に陥ったりするなど、さまざまな症状が現れます。

主婦が「引っ越しうつ」を発症した場合は、その症状が家事に現れると言われます。毎日食事を作るのに献立が考えられず、何を作っていいのか決断できなくなったり、買い物に行くこともできなくなったりすることがあります。

また、本人はうつ症状から食欲がわかず、味覚もなくなるなどして、食事を作るのが嫌になることもあります。引っ越し後、突然朝起きられなくなったり、身だしなみにも気を遣わなくなったりしたら、要注意です。

「引っ越しうつ」の主な症状は、こちらです。

  • 夜眠れなくなる
  • 毎日の炊事や家事ができなくなる
  • 笑顔が少なくなる
  • 食欲がなくなる
  • 引きこもりがちになる
  • 気持ちが落ち込み、憂鬱なことが続く
  • 身だしなみに気を遣わなくなる
  • 身体のあちこちに不調が出る
  • 涙もろくなる

「引っ越しうつ」になりやすい人とは

「引っ越しうつ」になりやすい傾向のタイプが分かっていれば、なるべくそうならないように家族が支えになったり、本人に負担にならないような工夫をしたりすることもできます。本人の性格上、引っ越しは大変な負担になると予め分かっていれば、無理な引っ越しを避けることもできるでしょう。

「引っ越しうつ」は女性、特に主婦がなりやすいと言われています。主婦は生活の中心が家庭なので、地域に密着して生活しています。それが引っ越しにより全く新しい環境に移ることは、想像以上にストレスがかかります。

人付き合いが苦手な専業主婦などはすぐに新しい地域に馴染めず、子供や夫が学校や会社に行った後に孤独感が強くなり、うつ病を発症してしまうこともあります。

小さな子供でも、転校して親しい友達との別れを経験したり、新しい学校ですぐに友達を作るのが難しく孤立したりするなどして、うつ状態に陥ることもあります。また、高齢者も、長年慣れ親しんだ環境を離れ、文化や環境の違う地域に引っ越しをした場合、喪失感や望郷の思いでうつ状態になることがあります。

もちろん働き盛りの男性であっても、職場の転勤で大きなカルチャーギャップなどにぶち当たり、精神的にうつ状態になることもあります。このように小さな子供から高齢者まで、誰もが「引っ越しうつ」に陥る可能性があります。

どんな性格の人がなりやすいのか
  • 物事を完璧にやりたい
  • 綺麗好きで、片付けるのが好き
  • 責任感が強い
  • 他人の評価が気になる
  • 人と争うのが苦手で平和主義
  • 気分転換が苦手
  • 常識を重んじている

以上のようなことが当てはまる人は、その生真面目さから、引っ越しの片付けや人付き合いを完璧にこなそうとします。家族が新しい環境で受けたストレスなども一手に引き受けて、自分は愚痴をこぼすこともできなくなります。

引っ越し後2ヶ月位経過して家族が落ち着いてきた頃に、その張り詰めていた気持ちが一気に落ち込みに転じることがあるので、注意しましょう。

「引っ越しうつ」かなと思ったら…

引っ越し後に心の落ち込みや体調不良が続く場合は、一人で抱え込まず、家族や友人に話を聞いてもらいましょう。そして早めに医師や専門家に相談しましょう。家族など周りの人が気付くことができたのなら、休養をとらせたり受診をすすめたりするのが理想的です。

「引っ越しうつ」は休養や薬物療法、カウンセリングなどで対処すれば回復できる症状なので、気付いた時に適切な処置をすることが大切です。

「引っ越しうつ」にならないために

「引っ越しうつ」は誰でも発症する可能性があります。それを念頭に置いて、引っ越しのストレスをなるべく軽減するための気の持ち方や工夫をして、予防するようにしましょう。

頑張りすぎない

引っ越し準備から転居後の荷解き、諸手続きなど、すべてを完璧にこなすのは大変です。無理のないスケジュールを立て、オーバーワークになりすぎないように工夫をしましょう。早く片付けたい気持ちはあっても、休息をとりながら作業することが大切です。

完璧主義者の人はすべてを自分で抱え込みがちなので、頼めることは家族や友人に頼むなど、周りの人に上手にお願いすることも肝心です。

優先順位を決める

引っ越し準備期間に余裕がない場合などは、急ぎの用事だけを先に片付けましょう。丁寧に梱包する時間がない場合は、引っ越し業者にお願いすれば手間が省けます。

また、引っ越し先でも一度に全部を片付けようとすると、あまりの大変さに疲労困憊してしまいます。そして「引っ越しうつ」になってしまうと作業ができなくなり、判断力も低下して余計に自分を苦しめる原因になります。

まずは新生活に必要なものから荷解きをして、シーズンオフの洋服などは少し後回しにしてからゆっくりとした気持ちで片付けましょう。

人付き合いを少しずつ広げる

近所の人には軽く会釈することから始めましょう。習い事やジムに行って共通の趣味の友達を見つけるのも良いでしょう。人付き合いも大切ですが、まずはその土地に慣れて魅力を知っていくことが、居心地の良さにつながります。

友達作りに焦るよりも、まずは生活圏の中を歩いてみて、行きつけのお店を作るのもおすすめです。早く友人を作ろうと無理をすると、心と身体が追いつかずストレスになるので、心に余裕をもって交友関係を広げていきましょう。

引っ越しは精神的にも肉体的にも大変なストレスがかかります。特に家族での引っ越しの場合は主婦に大きな負担がかかることも多く、「引っ越しうつ」を発症してもおかしくはありません。うつ症状は几帳面でまじめな人が発症しやすいものです。辛い思いをしている家族がいたら、すぐに適切な対処をするようにしましょう。