引っ越し代金の支払いはいつ?前払いや手付け金はNG

引っ越しの見積もりをお願いした時に、「お支払いはどうされますか」と聞かれます。その時に「こちらで立て替えはせず、会社が支払います」とか、「クレジットカードでお願いします」、「現金で支払います」などと返事をすることになるでしょう。

現金の場合、業者によっては先払いか後払いかを事前に決めていることもあります。どうせ支払うのだからいつだっていいじゃないと思うかもしれませんが、実はこれには事情があるんです。

引っ越し代金はいつ支払うべき?

国土交通省が制定した標準引越運送約款には、運賃等の収受に際しての記載があります。

「荷物を受け取る時に見積書に記載された支払方法により、荷送人から運賃等を収受します」とあり、その後請求書や見積書の記載についての条項が並んでいます。さらに、「荷物を引き渡した後に荷受人等から運賃等を収受することを認めることがあります」ともあります。

つまり、引っ越し業者としては「荷物を受け取る時に支払ってもらうが、荷物を搬入し終わった後でも構わない」という解釈になります。ただし、事業許可を取る際に標準引越運送約款をそのまま流用せずに、業者独自の約款を作成し届け出て認められた場合は、そちらが優先します。

ですから、もし引っ越し業者の見積もり担当者に「作業開始前にお支払いください」と言われたら、守るようにしてください。「お支払いはいつがよろしいですか」と聞かれれば、特に支払いのタイミングは決めていないということになります。

一般的な消費者の心理としては、引っ越しの全ての作業が終わった後に支払いたいと思うことが多いため、最後に「お世話になりました」と、支払われることが多いです。

収受のタイミングとそれぞれの思惑

業者によって、引っ越し料金の支払いのタイミングを事前に決めていることがありますが、それは次のような場合です。

作業開始前に支払う場合

引っ越し作業のスタッフが到着し、リーダーが挨拶をし、作業の流れなど一通りの説明があった後に、引っ越し料金を支払うことを決めている業者があります。

これは今後作業中にもし何か突発的なことが起こっても、見積もり時に決めた金額以上には一切追加料金はかかりません、という誠意を見せる意味があります。

さらに、引っ越し作業時には玄関ドアや窓を開け放ち、作業スタッフや手伝いの身内や知人、近所の人など、多数の人が出入りすることになり、その間ずっと高額の現金を気にしながら管理するのも負担がかかります。

紛失や盗難などのトラブルを防止するためにも、先にお預かりしておきましょうということでもあるのです。

作業途中に支払う場合

長距離の引っ越しで2日間にわたって引っ越し作業が行われる場合に、適用されることがあります。たとえば、長距離の引っ越しを大手の業者に頼んだ場合には、担当する地域により、荷物を積む営業所と荷物を下ろす営業所は違ってきます。

先に見積もりをして契約を取った営業所の売り上げとするため、転居先に移動する前に現金の回収を急ぎたいという事情があります。

また、あってはならないことですが、旧居から荷物を運び出し、転居先に到着したものの、いつまでたっても、荷主が到着しないことがあります。携帯電話に連絡を入れると、別人が出たり使われていない番号だったりして、そこで騙されたことに気付くわけです。

つまり、何らかの事情で現在の家の退去を迫られ、家財一式を無料で運び出し空っぽにして、しかも処分まで任されてしまったというわけです。当然、転居先の賃貸契約の事実もないでしょう。

こういう詐欺的行為を防ぐために荷物を積み終わった時点での支払いをお願いすると、うちを疑っているのか!と、言われてしまうことを避けるためにも、事前に約款で取り決めて、誰に対しても、荷積みのタイミングで請求している業者もあります。

作業終了後に支払う場合

水回りの修理をお願いした場合や庭木の剪定を業者にお願いした場合などは、作業が完了してから料金を払うのが一般的ですよね。それと同じ感覚で、引っ越しも全ての作業が終わってから払いたいと思う人は多いでしょう。

先に支払ってしまうと、その後きちんと作業を行ってくれるのだろうかと心配になる人もいます。大切な家財を大変な思いをして運んでくれるのですから、最後にお礼を言ってその時に支払いたいと思うのは自然なことですよね。

見積もり時にいつでも大丈夫と言われていたら、最後に支払っても問題ありません。

前払いや手付け金は一切不要

見積もり時に、繁忙期でトラックの仮押さえのため予約金が必要ですとか、混んでいる日だから手付け金を払えば優先するなど言って金銭を要求されることがあっても、一切払う必要はありません。

前払いができないのなら契約もできない、見積もりの割引額も無効になってしまう、と言われたら「なら仕方ありません。私に決定権はないので、お引取りください」とでも言って、早々に帰ってもらいましょう。

そんな悪質な違法業者と関わるとこの先良いことはありません。なかなか帰ってくれない時は「それでは、御社の引っ越し約款を見せてください」と言ってみましょう。

きちんと届け出をして正式に認められた業者であれば、国土交通省が定めた「標準引越運送約款」か、それに準じた独自の「約款」を作成して提示する義務があります。「標準引越運送約款」にはこのような記載があります。

「見積もりの際に内金、手付け金等(下見に要した費用を除く)を請求しません」この約款は、見積書の裏面に印刷されている場合が多いです。見積もりの際に営業マンが「目を通しておいてください」という場合がほとんどでしょう。それは、見積もり時に約款の提示が義務付けられているためです。

営業マンの中には重要事項をかいつまんで説明してくれる人や「今、ちょっと読んでみてください」と読み終えるまで目の前で待ってくれる人もいます。ただし、細かい字がたくさん並んでいるので、その場で全てを把握することは難しいでしょうし、目の前の営業マンを待たせるのも気の毒です。

そんな時に「どの辺が重要ですか」とか「どんなことが問題になりやすいですか」と聞いて、すぐ答えてくれるようなら信頼して良い業者と言えるでしょう。

「ちょっと今、手元にない」とか、「改定して新しいのを作成中なので、できあがったら持ってくる」などとはぐらかして見せてくれないようなら、無許可営業の違法業者と見なしてOKです。
本契約する前に発覚して良かったですね。すぐ出て行ってもらいましょう。

まとめ

正式な引っ越し業者で教育を受けた営業マンであれば、見積もりの際に引っ越し料金の支払い方法についても確認するはずです。

転勤の場合は、法人契約で会社が引っ越し料金を支払うのか、営業マンが勤務先に依頼者の在籍確認を取り、会社の締日や支払い方法について問い合わせをします。

一般の個人契約であれば、現金か、取扱い可能なクレジットカードか、口座振り込みの場合は何日前までになどと確認を取り、見積書に記載します。現金払いの場合は支払いのタイミングについても確認し、見積書に記載してもらうと良いでしょう。