猫や犬などペットを連れて引っ越しする場合の注意点

引っ越し業者のトラックには、どんなに荷台にスペースが余っていたとしても、動物は一緒には連れて行ってもらえません。ペットにとって負担にならない輸送手段を考えて事前に手配をしておく必要があります。

今回はペットを連れて引っ越す場合の注意点について紹介します。猫や犬などペットを連れての引っ越しの予定がある方は参考にしてください。

ペットの引っ越しでの注意点

引っ越しをする際には、自分で連れて行けるのかどうかをまず考えましょう。自家用車があり、家族とペットが一緒に乗れるなら良いのですが、公共の交通機関を使うなら多頭飼いの場合や大きな犬種だと大変です。

飼い主とペットが一緒に移動することが、必ずしもお互いにとって快適とはならないこともあります。ペットの個体差もありますが、引っ越しはペットにとってストレスがかかるものです。なるべく体調を崩すことなく安全に快適に移動するための注意点を紹介します。

業者は原則ペットを運ばない

引っ越し業者は、車やバイクの陸送、ピアノの運送など、各種のオプションサービスを用意しています。その中に、ペットの輸送を扱っている業者も多いため、引っ越し業者がトラックで家財と一緒に運んでくれるものと思い込んでいる人も少なからずいるようです。

しかし、国土交通省が交付している引っ越し業者のルールの指針となる「標準引越運送約款」によると、動物は運ばないことが明記されています。

オプションサービスでペットの輸送とあるのは、引っ越し業者が提携しているペット輸送業者に運んでもらうことがほとんどで、引っ越しの家財と同時に移動するわけではありません。ペットはペットだけ単独で輸送してもらうことになります。

ペット輸送の専門業者が自宅までペットを迎えに来てくれるため、ケージやキャリーバッグなどに入れて引き渡します。中には車の後部座席を自由に動き回れる専用車両を使う業者もありますが、不安や興奮で落ち着きなく激しく動き回るようなら、いつもの慣れているケージやキャリーバッグの方が良い場合もあります。

引っ越し業者がどんなペット輸送業者と提携しているかは、見積もりの段階で教えてもらえます。業者のサービス内容や車両などを確かめて、良さそうだと思えば後から追加で申し込むこともできます。

自分でたくさんのペット輸送業者の中から厳選したいと思えば、引っ越し業者のオプションではなく、インターネットなどで探してみて納得のいく業者に依頼すると良いでしょう。一匹だと割高になってしまいますが、ペットタクシーは飼い主とペットが一緒に移動することもできます。

手続きが必要なペットも

生後91日を経過した犬は、居住する市区町村に飼い犬として登録することが義務付けられています。併せて、狂犬病の予防接種を年一回受けることと、首輪や胴輪などに鑑札と注射済票を装着することとなっています。登録している住所から引っ越したときには、住所変更の届け出が必要です。

手続きの方法

登録してある住所から引っ越す場合は、同じ市区町村内でも登録事項変更届の提出が必要です。市区町村外に引っ越す場合も、引っ越す前に届け出が必要になるのか自治体により細部が異なることがありますので、事前に問い合わせてみてください。

引っ越し先の自治体では必ず登録の手続きをします。市区町村の窓口や、所轄の保健所の窓口などは自治体によって受付窓口が異なり、同一市区町村内の引っ越しでは、一部インターネットを利用した電子申請システムを使って変更手続きができる自治体もあります。

飼育している犬を同行する必要はありません。鑑札と注射済票を持参して、窓口に備え付けの登録事項変更届に記入し提出します。住所変更登録は前住所地の鑑札があれば無料で交換してくれる自治体が多いですが、有料で数百円かかるところもあります。

いつまでに、という期限が明記されているわけではありませんが、引っ越したらなるべく早く手続きを行いましょう。引っ越し先の慣れない土地で迷子になってしまい、誰かに保護されることがないとはいえません。そんなときに新しい鑑札を付けていれば、すぐに飼い主が判明します。

飼い犬の登録や予防接種は一頭につき一回で終わるわけではなく、住所変更や予防接種をしていない場合、20万円以下の過料がかかることがあるため気を付けましょう。

猫や犬と一緒に引っ越しする場合の注意点

ペットの輸送を業者に頼む場合は、引っ越しが始まる前に引き取ってもらえると安心です。自分の車で連れて行くか、一緒に公共交通機関で移動する場合は、引っ越し作業中のペットの様子を見てしっかりと管理をしなければなりません。

引っ越し当日の注意点

いざ引っ越しが始まると、玄関ドアは大きく開いたまま固定します。エアコンを撤去したあとの蒸し暑いときには、部屋の窓も開け放つこともあるでしょう。うっかり網戸がない側の窓を開けて猫がすり抜けて脱走したという話もあります。

日常と違う部屋の風景や、知らない人が大勢出入りして荷物を運び出す様子に、自分もどこかに連れ去られてしまうと不安になるのかもしれません。脱走しようとしたり、威嚇して吠えたりすることもあるため、引っ越し作業の邪魔にならないように、また、ペットを安心させるためにも、隔離できる場所があればそこにいてもらいましょう。

といっても運び出す荷物が置いてある部屋ではドアを閉めて閉じ込める訳にはいかないため、引っ越し作業中には誰も使わないであろう浴室が適しています。ドアをしっかりと閉めておき、誰かがうっかり開けないようにドアノブに「ペットがいます」「ペット隔離中につき開閉禁止」などと書いた紙を貼っておくと良いでしょう。

シャンプーを嫌がって浴室に近寄らないペットや、暑いときや中の様子が見えないドアでは心配ですね。そんなときはキャリーバッグに入れて人が慌ただしく動く様子が見えない向きに置いたり、静かな部屋に置いたりと工夫しましょう。

どうしても落ち着かないなら、家族の誰かが散歩に連れ出したり一緒に車に避難したりしてもらいましょう。くれぐれも炎天下の車中に置き去りにはしないでください。当日のことをあれこれ考えて不安になるなら、身内や近所の知人に預かってもらうか、ペットホテルの利用など考えて手配しておきましょう。

引っ越し後の注意点

ペットたちにとっては、いきなり知らないところに連れてこられて、今日からここが我が家、と説明されてもすぐに理解することは難しいでしょう。緊張、警戒、不安、いろいろな感情に襲われてストレスになることもあります。

特に縄張り意識が強い猫は、あちこち点検をして安心できる場所と確認できなければ落ち着けません。犬も猫ほどではありませんが縄張り意識はあります。そのための行動がマーキングです。去勢手術をしていても、引っ越してから室内のあちこちにマーキングされてしまうこともあるようです。

そんなときには、ペットの臭いが染み付いているものを置いて安心させてください。猫砂も真新しくせず、使用済みでニオイの残っている物を少量新しい砂と混ぜるなどして、自分の匂いがあるところが自分の居場所と認識させてあげましょう。

引っ越しの前後は忙しくてペットの世話が疎かになっていたこともあるでしょう。ペットがひと通り室内の点検が終わったあとで、しっかりと抱いてあげたり、一緒に遊んだりしてスキンシップやコミュニケーションを取るよう心がけてください。

よくあるトラブルの対処法

飼い主としては、前よりも広い部屋に引っ越して自由に動き回れるようになったので、新居に到着した途端喜んで興奮して駆け回るペットの姿を夢見ていた人も多いようです。

しかし、思うような反応を見せてくれず落胆することになるでしょう。動物にとっては何の前触れもなくいきなり自分のテリトリーが変わるわけですから、それは過大なストレスが掛かることになります。ペットからのストレスのサインを見過ごしてしまうと病気を引き起こすことにもなりかねません。以下によく見られるトラブルと対処法を紹介します。

トイレをしない

引っ越して新居に移るのと同時に、ペット用品を何もかも新しくするのは避けましょう。トイレ用品は以前使っていたものをそのまま運んでください。

しかし、気づけばしばらく排泄をしていないということがあるかもしれません。長距離の移動では、前日から食事を与えないなどの食事制限をしたり、飲み物を少量しか飲ませていなかったりしたせいで、便秘気味になることがあります。また、精神的なストレスにより安心して落ち着いて排泄ができないことに原因があるとの見方もあります。

犬は、あまり人の多くない安全な環境の良いコースに散歩に連れ出しましょう。犬でも猫でも、運動をしてお腹が空いて食事も摂れれば自然に排泄するものですが、食事をしても排泄できない場合は、お腹をマッサージしてみましょう。それでも出ないと不機嫌になったり体調が悪くなったりしますので、早めに獣医さんに相談してください。

食欲がない

心配事があると食欲不振になるのは人間もペットも同じです。一時的な引っ越しによるストレスか、病気によるものか、わからないこともあります。水分補給ができていればひとまず安心ですが、しばらく様子を見てもご飯に見向きもせず、食べても少量だけの場合や、好物のおやつをあげても反応が鈍いときは受診をおすすめします。

夜鳴きがうるさい(吠える)

動物が鳴くのは当たり前のことですが、人間の住環境の都合で普段は静かにするように無駄吠えや夜鳴きしないようにしつけているわけです。それが、引っ越しによるストレスから鳴いたり吠えたりすることがあります。

十分に体を動かして疲れて眠れれば良いのですが、寝たいのに神経が高ぶって眠れないときは誰でもイライラします。落ち着いて入眠できるように、ケージを暗くて狭い場所に移動させたり、寝る前に食事をあげたり、安心できる工夫をしてみてください。ストレス緩和のサプリなどをあげてみても良いでしょう。ところ構わず鳴き続けるときは病気の心配もあるため早めに受診してください。

近所へは、普段は夜鳴きをしないこと、引っ越しのストレスによる一時的なものであることを説明して、少しの間ご迷惑をおかけするかもしれませんがよろしく、などと引っ越しの挨拶時に手土産を持ってひと言付け加えておくと良いでしょう。

脱走する(落ち着きがない)

玄関ドアや窓に近寄って出たいそぶりを見せたり、落ち着かない様子を見せたりしたら、念のため首輪に電話番号を書いた迷子札を取れないように付けておきましょう。いったん飛び出した猫は人懐こい猫でないと新居に戻ってくるのは難しいでしょう。逆にあまりに人懐こい猫だと、拾い主に気に入られそのまま連れて帰られてしまうこともあります。

犬も、帰巣本能なのか引っ越し前の住居に戻って、近所の人から帰ってきていると連絡があることもあります。そのように無事に発見できれば良いですが、交通量の多い道路などは特に心配です。

絶対に脱走は避けるように努力してください。引っ越し前後は忙しくてペットと触れ合う時間もなかなか取れなかったことと思います。特に捨て犬や捨て猫だった過去の記憶を持つペットは、しばらく放ったらかしにされるとまた捨てられるのではと不安感を持つとも聞きますので、十分に遊んであげてください。

新居に慣れ、いつまでも飼い主と一緒であることがわかれば落ち着きますので、それまでの辛抱です。

まとめ

普段は賢くておとなしい物分りの良い愛犬や愛猫でも、引っ越しのストレスによって今までに見せたことのない行動をすることがあります。そこで驚いて叱っては逆効果です。穏やかな落ち着いたトーンで接しましょう。

荷造りや荷解きの間、落ち着きが無いからとずっと狭い中に閉じ込めておくのもかわいそうだと思ったら、しばらく信頼のできる人に預かってもらって、新居の片付けが落ち着いて十分にペットと接する時間が取れるようになった頃に引き取るのも一つの方法です。