近隣トラブルですぐに退去!敷金って返還請求できる?

立地や間取りや設備が気に入って契約した賃貸物件でも、いざ入居してみたら、誰に聴いてほしいのか窓を開けての昼夜問わずのカラオケ練習、深夜に掃除機のヘッドをガンガンとぶつける音、今にも壊れそうな音を立てて回転する夜中の洗濯機の脱水音……。騒音オンパレード。

ことを荒立てないように穏便に話を進めるつもりが、話がこじれそうなので出て行きます!

こんな時、敷金は返してもらえるのでしょうか?

短期間だから汚れていないけど敷金は戻せないの?

近隣の騒音トラブルで円満解決を目指したけれどらちが明かず、精神衛生上もこのままでは良くないと思い、不本意ながら退去を決めました。このような形で退去が決まった時、当然短期間しか住んでいないので目立った汚れはないのですが、最初に払った敷金は返してくれないのでしょうか?

敷金とは

敷金とは、賃貸の物件を貸す大家さんが、入居者の家賃の支払いが滞り、払えなくなった時に清算したり、入居者本人の不注意で室内を汚したり修繕が必要になった場合の費用として充当するものです。当然残金がある場合は、入居者に返還する義務があります。

場合によってはフローリングを張り替えたり、壁紙のクロスの全面交換になる場合がありますが、すべての費用を借りた側が負担する必要はなく、貸し主と入居者の負担割合を妥当なものとなるように計算し決定します。

この、敷金に対する定義というものが曖昧で、不動産管理会社、大家、入居者の三者三様の認識の違いによることから、昔から敷金返還のトラブルが絶えない現状がありました。

しかし、国会でおよそ120年ぶりとなる民法の大改正の法案の審議が行われることになり、改正案が通り施行されれば、それまで貸し主側に有利と思われていた条文が、入居者側に有利になるよう敷金や原状回復義務の定義が明文化されます。

地方では様々な風習があり、ますますわかりにくくしている保証金や敷引きについても、全国で統一されることになります。敷金は、原則的に貸し主が借主に全額返還するという内容になるでしょう。

原状回復義務とは

民放改正後は、自然損耗や経年変化、経年劣化というものに対しての原状回復の義務はなくなります。実際は以前からそうだったのですが、よりわかりやすく明文化することになりそうです。

あくまでも、入居者の不注意で生じた修繕と、入居者と大家の負担割合を決め、お互いの合意のもと金額を決め、それを最初に預けた敷金から差し引き、残りを変換することが義務付けられます。

そもそも民法の改正案が出されるよりも前に、敷金とはそういう名目のものであったはずです。それを明文化しなかったために、お互いにとって都合の良い解釈で、預かった敷金をすべて修繕費にあてていたというようなケースが多いです。

言い方は悪いですが、これは「言ったもん勝ち」で、交渉してその中から大家が負担する額を差し引いた額で返還請求をして戻ってきたケースがあります。言わなければそのまま、少額の敷金の返金がされて、そんなものかと諦めていた人も多いでしょう。

中には、原状回復と言う名目で、それまで使用していた古いエアコンを最新式のものに買い替え設置するための費用を全額負担させるようなこともありました。しかし、この場合これからの物件の設備として長く使用することになるのですから、前入居者が全額負担というのもおかしな話です。

退去時の精算の明細書に内容が記載されず合計額しか記載されていない場合はよく確認すべきです。何にいくらかかったのかは知る権利があります。入居者からおかしいという指摘がなければ、これがそのまま、まかり通ってしまう世界です。

ルームクリーニングとは

これも、入居時によく確かめておかなければなりませんが、敷金を預かった他に、特約で火災保険○○円、鍵交換代○○円と並んで、ルームクリーニング代○○円と最初に記載されている場合があります。その場合は、敷金に含まれず必ず払わなければならないものです。

以上のことから、短期間だけの入居で、どこも修繕の必要がなく目立った汚れがないということなら、敷金は通常全額返還されるはずです。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」とは

昔から、大家と入居者の間での敷金返還トラブルが後を絶たないため、国土交通省では過去の数々の事例を鑑み、トラブルを未然に防ぐ目的で「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」というものを制定しました。

公式ホームページに紹介されていますので、必要に応じてダウンロードして目を通しておいた方が良いでしょう。

※国土交通省のホームページ
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

訴訟問題に発展するケースが多々ある

入居者と大家の間でトラブルになり、少額訴訟を起こすケースがあります。それなら、と敷金が返還されることが非常に多いんです。不動産会社も大家も敷金の性質をわかった上で、入居者に何も言われなければそのまま、としていることが多いので注意が必要です。

一定のガイドラインなので法的効力はない

このガイドラインを示したことにより、借りた側は泣き寝入りすることなく、敷金の返還を請求しやすくもなったかもしれませんが、指針を示すガイドラインなので法的な拘束力はありません。

困った時は専門機関の窓口へ

疑問に思い敷金の明細の提示を求めたり、大家との負担の割合の根拠を聞かせてもらいたいと思っても、そこは過去から何度も繰り返しそういった揉めごとを経験してきた不動産会社の社員の方が1枚も2枚も上手でしょう。

不動産会社はできれば長く付き合いのある大家を尊重したいものです。話にならない、らちが明かない、と思った時は、これ以上直接話し合って関係を悪化させる前に、国民生活センターや地域の行政の消費者生活相談センターなどへの無料の相談窓口に相談してみましょう。

専門の消費生活アドバイザーの資格を持った担当者が、過去の事例を参考にして的確な助言をしてくれます。問題が難しく、なかなか解決が見い出せないような時は、その分野に詳しい弁護士を紹介してくれます。法律相談の無料窓口を設けている日もあるので利用してみると良いでしょう。

自分は悪くないのに違約金がかかるの?

そんな問題のある人が入居しているとは思わずに、管理会社も大家も親身になってくれず、先住者を「いいところもある人なんだよ」などと言って取り合ってくれる様子がありません。

これ以上は時間の無駄だと退去を決意し、よく考えたら、自分は全く悪くないのに契約期間内の退去だから違約金が発生するというのは納得がいきません。というような場合はどうしたら良いのでしょう。

賃貸契約書を確認

まずは、入居の際に取り交わした賃貸契約書を確認してみましょう。そこに退去に関する記載はどうなっていますか?

自己都合による契約期間内の退去は、解約違約金として家賃の○月分を請求します、というような内容の文章が記載されていることが多いでしょう。解約違約金の必要のない場合は、何らかの事情で退去を大家から要求された場合です。

自己都合による退去なのか

自己都合の退去とは、もっと良い物件を見つけたから移ることにしたとか、彼が海外転勤になり急に結婚が決まってついて行くことになった、などの場合です。

この場合は隣人たちの騒音によりやむなく出て行くわけですから、100パーセント自己都合かということになると、そうとも言えない部分もあるため、交渉する余地が残されているかもしれません。

交渉してみる余地はある

例えば、そのような騒音や人の迷惑を何とも思わない人が住んでいて、過去にそれが原因で退去した人がいなかったかどうか尋ねてみましょう。もしいた場合は、入居前に伝えなかった不動産会社の告知義務違反に当たることも考えられます。

その辺が落としどころではないでしょうか。せっかく引っ越して来たのに、短期間で、また引っ越し費用を捻出して引っ越ししなければならないのでは納得できないでしょう。とりあえずは交渉してみるべきだと思います。事情を飲んで少しでも負担してくれるのならばまだ救われます。

まとめ

短期間なら敷金の全額返還も不可能ではありませんが、期間や状態に関係なくルームクリーニングは必ず行う必要があるとしている物件もあります。

この場合は、特約として賃貸契約書に最初にルームクリーニングを借主の費用負担で行うこととしてあり、署名捺印したのであれば払わなければなりません。

ごく短期間の入居ということであれば、前回ルームクリーニングをしてから、激しく汚れているわけではないでしょうから、本来なら簡単な普段のお手入れや掃除で何とかなることも多いものです。

実はルームクリーニングは、次の入居者募集のため室内をキレイにしていて心証をよくし契約に繋げたいというためのものですので、本来なら大家負担となるべきものなんです。

退去する前にきちんと掃除をしておけば、次の人のために借主が払う性質のものではないということは、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」の21ページに記載されていますよ。