引っ越し業者の訪問見積もり(下見)の流れと注意点

単身パックなどの定額制の引っ越しとは異なり、通常の引っ越しプランは荷物量や移動距離などに応じて1軒ごとに料金が異なります。そのため、正しく引っ越し料金を見積もるために訪問見積もりが欠かせません。

そこで、引っ越し業者による訪問見積もりがどのような流れで進むのか、メリットやデメリット、注意点などを紹介します。

訪問見積もりする際の流れ

一括見積もりサイトや引っ越し業者のホームページなどで家具や家財の一覧にチェックを入れて、簡易的に見積もり額が出るサービスもありますが、これはあくまでも概算です。一覧にはない荷物があったり、チェックのし忘れがあったり見落としがあったりしがちで、大体いくらぐらいという目安程度にしかなりません。

そのため、引っ越し業者では正確な料金を見積もるためには訪問見積もりを依頼することを推奨しています。

引っ越し業者に電話をする

まず、自宅に来てもらうのに都合の良い日時を把握しておきます。所要時間は荷物量により異なりますが、一人暮らしの引っ越しなら早ければ15分から30分程度です。荷物が多かったりオプションサービスを色々と頼みたい場合は相談や説明などに時間がかかることもあり、1時間から1時間半程度見ておくと安心です。

連続して複数の業者に来てほしいときには、じっくりと話を聞いて検討したいタイプなら2時間空けてスケジュールを組むようにすると良いでしょう。少々遅刻して来ても2時間あれば調整できると思います。そして本命と思われる業者に最後に来てもらうようにすると良いですが、他にもっと良いところが見つかればそこを本命にしてください。

引っ越し業者のフリーダイヤルや代表電話番号に電話をかけます。電話では、氏名と、どこからどこまでの引っ越しか、いつ頃予定しているか、現在の住まいの部屋数、何人で引っ越すのか、連絡の取れる電話番号などを聞かれます。

小規模の業者ならこの時点で訪問見積もりの日時を決定することもあります。しかし、多くは、地区の担当者から折り返し連絡が来ることになるでしょう。混み具合により依頼者の希望した日時が難しいことがあるかもしれません。他の業者と予定がかぶらないようにうまく調整しましょう。

訪問見積もり当日

挨拶のあとは、先に荷物のチェックをする人もいれば、先に大まかに会社の説明とサービス内容など自社アピールから始まる場合もあり、人によりさまざまです。

時間を有効に使いたいなら、あらかじめホームページなどで引っ越し業者の特徴やサービス内容を大まかに把握しておきましょう。それにより質問内容や聞きたいことなどをあらかじめ準備しておいた方が実のある話ができます。

荷物チェック

全ての部屋をチェックします。片付いていないからと抵抗を感じる人もいるようですが、引っ越し業者は突然の引っ越しの荷造りなども請け負うため、ちらかった部屋も慣れていますので心配には及びません。

しかし、正しく荷物量を把握してもらうためには、やはりある程度小ぎれいにしておいたほうが見誤りがありません。不用品や譲る予定のある家具などは「これは運びません」ときちんと宣言してください。まとめて荷物量に含まれてしまうとその分だけ引っ越し料金がかさんでしまいます。

収納スペースも全ての扉を開いてよく見渡す人、広さだけを確認して荷物量を把握する人、さまざまなやり方があります。部屋の広さを見てどんな荷物があるかだけを目だけで確認して次の部屋に移る人や、引っ越し業者の家具チェックリストに逐一「正の字」を書いて細かく書き込む人など、本当に千差万別です。その様子次第でベテランか慣れていない新人かが分かるものです。

見積もるダンボール数も各社で違ってきます。それにより選ぶトラックのサイズが変わることになるため、各社の数値をよくチェックしてみてください。

引っ越しプランの説明

パンフレットを渡され、ひと通りの引っ越しサービスの概要の説明があります。話の端々に、自社の強みとする特徴、どんなところをウリにしているかなどのポイントを聞き逃さないようにしましょう。一日に何社もの相手をするのでは話がごっちゃになりやすいので、一社ずつメモを取りながら話を聞くことをおすすめします。

新居の玄関前の道路幅、エレベーターの有無、途中に狭い道がないか、長時間トラックを停めて作業できるような場所か、建物の階段の幅は、など聞かれますので、答えられるようにあらかじめ準備しておきましょう。

荷造りは自分でするのか、車やバイクは自分で運転して移動するのか、エアコンは全てはずして持って行くのか、などオプションサービスの利用の有無を聞き取り、希望の引っ越しの形が見えたら、いよいよ見積もり書作成です。

見積もり書作成

引っ越し希望日時にトラックの空きがあるか、他のオプションサービスの対応の可否などを確認して見積もり書の項目が埋められていきます。ノートパソコンやタブレットを使う人、複写式の見積もり書に手書きで記入していく人など、これもさまざまです。

ダンボールは50個まで無料です、ハンガーボックスは5個貸し出します、など説明しながら備考などにもどんどんと書き込んでいきます。そして、いよいよ引っ越し料金の全てを合計した見積もり額が提示されます。

引っ越し料金の値下げ交渉

計算した見積もり額の提示の仕方もさまざまです。口頭で「だいたい○○万円です」や、計算して出た電卓の数字を見せる人、端数を値引きして「○○万円にします」と返事を待たずに書きこむ人など、色々なタイプがあります。

ここで間違っても「思ったより安いですね」なんて言わないでください。あとで説明する「根切り交渉」の値下げ幅に関わってきますので。

最終的に出してもらった見積もり書を受け取った後に裏の標準引越運送約款の説明があり、訪問見積もりは終了です。名刺を見て、返事はどこにするのかを確認をして引き取ってもらいましょう。訪問見積もりをした人対象の洗剤やお米などのプレゼントは受け取っても良いですが、ダンボールはまだ受け取らないでください。詳しくは後述します。

訪問見積もりのメリットとデメリット

訪問見積もりによるメリット、デメリットはありますが、適正な価格でトラブル無く引っ越しをするためには欠かせないものです。

メリット

人当たりのよい営業マンだと、パンフレットやホームページなどで分からない裏話などを聞くことができます。また、この日ならさらに安くなる、この日は全員社員で対応できるなどの情報も得やすいです。担当者の人柄で業者を選んで正解だったという話もあるため、訪問見積もりに来てもらうメリットは大きいです。

また、組み立て式の家具などは分解する必要があるのかそのままで良いのかなど、実際に見てもらって質問することもできます。また、プラスチックの衣装ケースやタンスの引き出しはダンボールに詰め替えるべきかそのままで構わないかも見てもらった上で判断できます。

電子レンジや炊飯器など、どう荷造りしたら良いのか尋ねると、これはそのままで良いですよ、と言われたり、AV機器接続サービスを有料で申し込もうと思ったら、この程度ならこちらで無料でやりますよ、と言われたりします。やはり対面で実際に物を見てもらって相談すると話が早いし、無料でサービスしてくれることも多いものです。

何より最大のメリットは、荷物量を確実に把握して、適した大きさのトラックと必要な人員を配置でき、正確な引っ越し料金が計算できるという点です。これが、見積もったトラックが小さければ、荷物を全て積みきれずに往復したり、他の応援のトラックを頼んだりすることになり、余計な時間がかかってしまいます。

悪質な業者では、追加料金が生じてしまいます。払えないと断ると、外に置き去りにされることもあるようです。全ての荷物が載せられるように多めに見積もってトラックが大きくなっては、その分、引っ越し料金も高くなってしまいます。作業員もひとり増えるごとに8,000円から15,000円程度はかかってしまいます。

デメリット

一人暮らしの女性は、見ず知らずの男性が入室して隅々まで荷物を見られるのに戸惑いを感じる人も少なからずいます。身内や知人に立ち会ってもらえるようなら頼んでみましょう。どうしても抵抗があるという人は女性スタッフに見積もりに来てもらうか、女性限定の引っ越しサービスを依頼すると良いでしょう。

押し売りが断れないタイプの人は、ぜひ誰かに一緒に立ち会ってもらいましょう。また、ある程度時間が経ったところで電話をかけてもらったり、近所の人にドアチャイムを鳴らしてもらうなりして助けてもらうと良いですよ。当然、強引に契約を迫るような業者はキッパリと断ってください。

訪問見積もりする際の注意点

何の心の準備もないままに訪問見積もりに来てもらうと、うまく相手のペースに乗せられて気がついたら契約が終わっていた、なんてこともあるものです。そうならないための注意点を紹介します。

値切り交渉でのポイント

根切り、値下げ交渉、というと「私にはできない」と抵抗感を持つ人もいると思います。しかし、引っ越しの場合は日常的に行われていることですので、恥ずかしがったり気後れしたりする必要はありません。逆に引っ越し業者側も値切られることを前提に、最初は高めの見積もり額を提示してくるのです。値引きしてもらわないことには損をしてしまいますよ。

最初の見積もり額でOKしない

最初に提示される見積もり額は、必ずしも正式な金額ではありません。この金額を提示したときに依頼者はどんな対応をするかと観察されてもいます。内心では「安い」と思っても、決して顔に表さずに渋い表情を見せて「結構するんですね。高いですね」などとつぶやいておきましょう。

すると、「では、これぐらいではいかがですか」というようなやり取りがあり、見積もり額は下がってきます。中には、営業所の責任者に電話で相談して了解を取り、「これが精一杯です」と思い切った値下げをしてくることもあります。

この段階で、目の前で何万円も値下げしてもらうことができるのですから、くれぐれも最初の見積もり額で納得してはいけません。

その場で即決しない

かなり値下げした額を提示しておいてから「今、この場で決めてくれたらこの金額でやらせてもらいます」と、契約を迫られることがあります。しかし訪問見積もりを依頼した全ての業者の見積もり書が揃わない時点での契約は避けてください。

もし、本命の業者にそう言われたとしても、その場では契約しない方が無難です。見積もりに来てもらった最後の業者の見積もり額が最安値であった場合でもです。

「主人に相談してからでないと決められない」、「上司の決裁が必要」、「お金は親が出すので」などと、何とかその場での契約を避けて、引き取ってもらってください。

見積もり書を出してもらった業者から「その後、どうなりましたか」と連絡がきます。いくら安くなってもこの業者には頼みたくないと思えばキッパリと「他に決まった」と断りましょう。

迷っているなら「他社がもっと安かったので決め兼ねている」ことを伝えましょう。すると、上司と相談し、さらに安い金額を提示してきます。その金額はメールやFAXで送ってもらうなどして証拠を残しておきましょう。

迷っている数社と交渉したあとに、本命の一社を決めましょう。最安値に限らず、本当に自分が頼みたいと思った業者に決めると良いでしょう。この時点ではあまり料金差がないでしょうから。

そして本命の業者に「私はそちらにお願いしたいが、他にもっと安い業者があるのでそちらにしろと言われている。どうしたものか」などの相談をすれば、さらに安くなる可能性が高いです。

しかし、度をこし越した根拠のない金額で値引き要求をすると「そこまでは下げられませんので、残念ですが撤退します」となってしまいますので、何ごともほどほどに。

ダンボールはまだ受け取らない

最近は訪問見積もりを依頼しただけで、プレゼントをもらえることがあります。それと同じような感覚で、「無料のダンボールも置いていきます」と言われ、うっかり受け取ってしまいトラブルになるケースがあります。

無料とは言っても、引っ越しが成約して初めて無料になるものですから、まだ正式に契約をしていない時点で受け取るべきではありません。

その業者と契約しない場合は、無理やり買い取らされたり、送料負担で送り返したり、引き取り手数料を支払ったり、とロクな目にあいません。そんなに支払わなければならないのか、やり取りも面倒、という心理を利用して成約にこぎつけようとする悪質な手口です。

業者にしてみれば、ダンボールを置いていきさえすれば、どっちに転んでも損になることはないのですから。

まとめ

訪問見積もりを何の準備も知識もない状態で進めてしまったがために、あとになって敗北感を感じる人が少なからずいるようです。

なぜなら、あまりにも無知で相手の言いなりになるしかなかった、何も言わなくても業者から先に値下げしてくれたので特に交渉はしなかった、ノウハウさえ知っていればもっと安くできたのに、という後悔とも反省ともいうような事例がたくさんあるからです。

とりあえずは各社のサービス内容をザッと調べて聞きたいことをあらかじめメモして準備し時間を効率的に使い、あとは値下げ交渉をうまく進めてください。玄関先で名乗らず名刺も出さず、荷物を見に来たのだからと当然のようにヅカヅカと室内に上がり込んでくる人もいますが、そんなところは話も早々に切り上げて早めに帰ってもらいましょう。