引っ越し先の住所に「大字千代田字栄」なんて並んでいると、どこで区切るのか一見分からないことってありませんか?都道府県の次にくるのは市区町村ですが、それよりも小さい単位を大字(おおあざ)、さらに小さい単位を字(あざ)や小字(こあざ)と言います。
そういえば、田舎の本籍地の住所にそんな漢字が使われていた!なんて人もいるのでは?どうして付いていたり付いていなかったりするのでしょうか?今回はその謎に迫ります。
正しく住所を書けますか?
郵便物やインターネット上で住所を書いたり入力したりする場合、丁目や番地をハイフンつなぎにすることが多いでしょう。しかしそれはあくまでも略した書き方で、正確な住所ではありません。正確な住所というのは、役所に届け出た住民票に記載されている住所のことです。
とはいっても、役所の窓口で転入届を提出する際、数字をハイフンで結んで書いて提出したという人がいるかもしれません。そういうときは、役所の職員が正しく入力し直して住民登録しています。
住民票が手元にない場合は、運転免許証を確認してみてください。丁目の数字だけが下記のように漢数字になっていませんか?
「富士一丁目2番3号」
この住所は一丁目の一が漢数字で、後の2番3号はアラビア数字になっていますね。これは間違えたわけではなく、正式にはこうなっています。その理由は、町名にあります。この場合の町名は、普通に考えれば「富士」だと思う人が多いでしょう。
でも、それではハズレで、正確には「富士一丁目」までが町名になります。ここまでが固有名詞なので、一丁目の一が漢数字になるというわけです。ただし、漢数字ではなくアラビア数字が正式である住所も存在します。
それは、住居表示に関する法律が正式に制定される前に、すでに土地区画整理により字名が変更されていたというケースです。「●丁目」までは町名には含まれないとしているため、アラビア数字を使用しています。つまり、昔からきちんと開発して整備してきた都心部ならでは、ということになります。
大字(おおあざ)とは
明治時代の廃藩置県により、昔の江戸が東京府を経て今では東京都になりました。都道府県以下も、時代の流れで合併や再編をくり返し、その都度住所表示を変更しながら今の地名になっています。
実際には、新しい町村名の後に「大字●●」と付け足して、その地名を残していることが多いです。その地名は適当に付けられたわけではなく、何らかの由来があってその名を継承してきたわけですから、その土地に住む人たちにとっては大切なものです。自分たちの代で消滅させてはいけないという気持ちがあってのことかもしれません。
しかし世代が変わり、昔の地名にそこまで愛着を持っていない人たちの代になると、自治体独自に大字をなくしたり、市名そのものを変更したりすることがあるかもしれません。
記憶に新しいところでは、さいたま市やあきる野市、かすみがうら市など、漢字から平仮名表記に変わったところも多くあります。なかでもカタカナを使う南アルプス市は、日本国内なのに異国のようなインパクトのある市名になりました。
これは町おこし的な効果もあり、その市がメディアに取り上げられるなど宣伝効果は上々です。さらに観光客が訪れて名産品を買ってくれれば、その地区の宿泊施設やみやげ物店、観光施設などで相当の利益を上げることができ、地域活性化に役立ちます。
字(あざ)や小字(こあざ)とは
大字よりも、さらに狭い範囲の区域で使われていた地名です。何軒かの家のかたまりでまとめたグループ名や班名みたいなものと思うと、分かりやすいかもしれません。
実際、隣組など自治体の下部組織が機能していた時代があり、近隣の世帯で「困ったときはお互い様」という互助の精神が培われてきました。字で区域を分割することにより、より近隣の住人の結びつきを強める効果があったのでは、と考えられます。
大字や字が付くときの住所を省略して記載する方法
郵便番号はもともと5桁が使用されていました。それが7桁に増えたことにより、都道府県と行政区の市区町村名までを郵便番号で表すことができるようになりました。
例えば総理大臣に手紙を出したいとき、首相官邸の住所「〒100-0014 東京都千代田区永田町2丁目3-1」の場合は、「100-0014 永田町2-3-1」で届きます。ダイレクトメールや年賀状の宛先を手書きでたくさん書かなければならない人にとっては、文字数が少なくなって便利と言えるでしょう。
でも実際、ここまで省略した宛先を書く人は、どのくらいいるのでしょうか?特に「本町」や「中央」、「新田」などは全国によくある地名なので、郵便番号がもし間違っていると、正しく着かない恐れもあります。
では、大字や字は、郵便物の宛先を書くときに略しても良いのでしょうか?郵便局のホームページには、大字や字の記載の省略についての説明が、きちんと載っています。
町域名の前に大字や字が付く場合は、例えば住所が「〒333-0823 埼玉県川口市大字石神」なら、「333-0823 石神」と省略できます。一方で、町域名のあとに字が付く場合は、例えば住所が「〒038-3802 青森県南津軽郡藤崎町大字藤崎字西村井」なら、「038-3802 藤崎字西村井」と書きます。
住所を記載するときの注意点
上記の例は、あくまでも郵便局を利用した場合の宛先の記載方法です。一般的に住所を書く場面では、きちんと大字や字を記載した方が良いと言えます。
例えば、婚姻届です。夫と妻の住民票に記載されている住所をそれぞれ記入することになりますが、大字や字の文字を省いて書いて提出したために、住所相違ということで正式に受理してもらえず、まだ結婚したことになっていなかった、なんてこともあります。
これは役所の時間外受付の窓口に提出した場合などで、届け出た当日に受理してもらえず、後日窓口で処理をすることになります。そうなると、結婚記念日は届けを出した日なのか、正式に受理された日とすべきか、もめてしまうこともあるでしょう。2人にとって思い入れのある記念日や誕生日を結婚記念日にしたいという場合は、注意が必要です。
このように、役所や公的機関に届け出る書類の住所は、基本的に住民票とそっくり同じように記載して出しましょう。漢数字やアラビア数字の違いについても、指摘があります。マンション名なども、カタカナ表記のところをアルファベットにしたり略したりせず、正式な名称で書くようにしましょう。
実際は大字や字は特に記載しなくても、その前後の町名などで判断して郵便物は届きます。しかし、公的書類や銀行の届出、身分証明書や住民票添付の契約や申請などで、住所を記載する必要がある場合は、必ず住民票に記載されている通りの正式な住所を書くように心がけましょう。
自治体によっては「直しておきますね」と正しい住所を赤ペンで記載して直してくれることもありますが、そうでない自治体もあります。長らく待たされたあげく、「書き直し」と届出用紙を差し戻されることもあるので、注意しましょう。