引っ越しで住民票は移す必要あるの?移さないとどうなるの?

転勤などで家族で知らない土地に引っ越してきた場合は、そこで生活をすることになるので、役所に転入してきたことを届け出なければなりません。しかし事情によっては、必ずしも役所に届けを出さなくても良い場合があります。それはどんなケースなのか、また移さないとどうなるのかについて説明します。

引っ越したら住民票を移す手続きが必要

引っ越しをしたら、基本的には住んでいる市区町村の役所へ住民登録の届け出を行わなければなりません。まずは、以前住んでいた住所地の役所で転出届けを出して、転出証明書を発行してもらいます。

そして新たに住むことになった市区町村の役所に転出証明書を持参し、転入届けを提出して住民登録をします。

法律で決められている

住民基本台帳法の第22条で、「転入をした者は、名前、住所、転入年月日、以前の住所、同居する家族の名前と続き柄などを市区町村長に届け出なければならない」と定められています。

14日以内に届け出る義務がある

不動産会社と賃貸契約を結んだ日や引っ越しをした日ではなく、厳密にはそこに住み始めた日から起算して14日以内に、住所地の市区町村長に届け出なければいけません。

役所の市民窓口で住民登録の届出用紙に必要事項を記入し、窓口に提出するだけで、転入は認められます。その際に、マイナンバーの通知カードや個人番号カードを新住所に変更してもらう必要もあるため、忘れずに持参しましょう。

住民票を移さないとどうなるの?

法律で決められた手続きを行わないと、どうなるのでしょうか?また、期限までに届けられなかった場合はどうしたらいいのでしょうか?

罰金が発生することも

虚偽の届け出をしたり、正当な理由がなく届け出をしなかったりすると、「5万円以下の過料に処する」ということが法律で決められています。どうしても時間をつくれない場合は、代理人による届け出も受け付けています。

自治体のホームページを参照して不備のないように必要書類を用意し、代理人に手続きをしてもらいましょう。その際には、代理人の身分証明書と代理人選任届などが必要になります。

最寄りの自治体のサービスが受けられない

住民登録をしていないと、その市区町村の提供する住民サービスが受けられません。例えば健康診断の無料券や無料予防接種、出産手当、児童手当、乳幼児医療費助成金などの支援や助成も、一切受けられないことになります。

このほか、公共施設などを利用するにも、その地域の住民以外は何倍もの料金がかかってしまいます。例えば夏の市民プールを利用する際、市民であれば格安で利用できるところ、他の市町村の住民だと高額になったり時間制限が設けられていたりすることがあります。

また、広報誌などで住民対象のイベントやスポーツ教室などの募集が行われていても、住民登録がなければ参加できません。図書館などの公共施設も、住民でなければ利用登録をしてカードを発行してもらえません。

図書館の中で本を読んだり調べものをしたり、DVDを視聴したりすることはできても、図書やCD、DVDなどを館外に持ち出すことは許可してもらえないでしょう。

犬を飼っている人は、毎年1回、狂犬病の予防注射がありますが、最寄りの自治体での集団接種ができず、個人的に動物病院で受けなければなりません。以前住んでいた自治体からは接種のお知らせの通知が転送されて届きますが、そこの集団接種に出向くとなると、移動方法によっては犬にも負担をかけることになります。

さらに万が一迷い犬になった場合、保護されて首輪につけた鑑札から飼い主に連絡を取ろうとしても、登録してある住所に住んでいなければ連絡の取りようがありません。飼い主が見つからなければ、最悪保健所送りになってしまいます。

子どもの転校手続きができない

子どものいる家庭が引っ越した場合、住民登録をしないと、公立の小中学校の転校手続きができません。公立の保育所などの入所希望も、受け付けてもらえるかどうか分かりません。ただし、DV被害などのために夫から一時的に身を隠して引っ越してきた場合などは、前住所と新住所の役所に相談することで受け入れてもらえることがあります。

住んでいる場所での選挙権がない

住んでいる地区の選挙の投票権がありません。転入届を出してから3か月を経た後、つまり確実にその土地で生活をしている実態が確認できなければ、選挙人名簿に正式に記載されません。これは、選挙の不正を防ぐためです。選挙人名簿に記載されれば、新住所地の選挙区で投票ができるようになります。

公的郵便物や重要郵便物が届かないことがある

郵便局の転居・転送サービスに申し込めば、宛て先に旧住所が記載された郵便物でも、1年間は新住所に転送してもらえます。しかし、封筒の表面に「転送不要」と記載がある場合、転送されません。

そういう郵便物に限って重要な通知であることが多いですが、結局は宛て先不明で戻されてしまいます。そのため、自分宛てにどのような重要な郵便物が送られたのかも、分からないままになります。また、公的機関から郵送される郵便物も、住民登録のある住所の宛て先に届けられます。

運転免許の更新にも不便

運転免許の更新や変更登録などは、住民登録をしてある住所地の都道府県の運転免許センターや警察署で行います。また、運転免許の本試験を受ける人も同様です。1回で受かれば問題ありませんが、遠方から何回も受験することになってしまっては大変です。

特別に移さなくても良い場合もある

ここまで、引っ越しをしたら住民票を移すのは法律で定められていて、義務であると説明してきました。でも実は、特別な場合に限り、住民票を移すことを免除される場合があります。

単身赴任や学生などの一人暮らし

例えば、父親だけが単身赴任のため別の場所で住む場合、学生が遠方の大学に入学し、卒業までの間親元を離れて一人暮らしをする場合などです。

そのような場合は、長期休暇の際など何かの折に家族が住む自宅に戻って、行き来することになるでしょう。家族がその場所に残り生活の本拠地となっていたり、単身赴任期間が1年未満だったりする場合は、住民票は移さなくても良いことになっています。

もちろん本人の希望があれば、短期間でも住民票を移すことはできます。つまり、このような場合は、住民票を移しても移さなくてもどちらでも良いことになります。

建て替えなどの一時的な仮住まい

自宅が老朽化し、建て替えのために一時的に住まいを別の場所に移し、新居が完成したらまた元の場所に住むという場合も、1年未満の仮住まいであれば、住民票は移す必要はありません。

家族での引っ越しなら、住民票を移すことは必須です。その土地で近隣住民とともに生活していくつもりなら、移すことによるデメリットはありません。一人暮らしの場合でも、すべての荷物を運び出し、卒業後も就職してからも実家に戻らない予定なら、住民票は移す義務があります。

最近では役所の書類はコンビニや郵送で取得することもできますが、自治体のすべての手続きが簡略化されているわけではありません。一人暮らしの期間に免許更新を迎える予定の人は、そのために高い交通費を払ってとんぼ返りするのなら、予め住民票を移しておいてもいいかもしれませんね。