引っ越しをキャンセルする場合は業者のダンボールに注意

転勤が急に取りやめになった、不用品を処分していたら荷物がかなり減った、トラックを所有する知人が手伝ってくれることになったなどの理由で予定していた引っ越し業者をキャンセルすることもあるでしょう。

引っ越し業者をキャンセルするにも、やり方次第ではトラブルになってしまうことがあるため要注意です。

引っ越しをキャンセルする際の注意点

正式な契約書を取り交わさなくても見積書を確認して「お願いします」と引っ越しを依頼する意思を伝え、確認の署名をすれば、契約したと見なされます。作ってもらった見積書を受け取った時点で契約したことになるとは思わなかったとか、別の業者と二重契約をしてしまったという人もいるようです。

そんなときは、どちらか一方を断らなければなりません。また、冒頭のように、一社に決めたのに諸事情でキャンセルしなければならないこともあるでしょう。一度決まった引っ越しをキャンセルする場合の注意点を説明します。

キャンセル料がかかるタイミング

引っ越し業者と依頼者との間でトラブルを防止するために決められたルールがあります。それらを記したものが、国土交通省が公示する「標準引越運送約款」です。この約款は、見積書を作ってもらうときに業者が必ず依頼者に提示することが義務付けられています。お客さま控の見積書の裏面に小さな文字で印刷されていることが多いです。

この提示の仕方も担当者によってさまざまです。「一通り目を通してください」と約款を手渡してじっと待つタイプ、重要事項だけを口頭で説明するタイプ、「あとで読んでおいてください」ならまだしも、何も説明のないまま帰ることもあります。

しかし、7,500文字を超えるかなり小さい文字で書かれた難しい言い回しの文章を、短時間で内容を理解しながら読み進めるのは困難です。

約款を提示されたら、「どこが重要ですか」、「何に気をつけたら良いですか」、「かい摘んでどんなことが書いてありますか」など聞いてみると良いでしょう。もちろんあとで時間のあるときに読んでみることをおすすめします。

タイトルが「標準引越運送約款」となっているなら、見積書の裏面の小さな文字で読まずに、下に示したURLでパソコンやスマホの画面で字を拡大して読むのでも良いと思います。とにかくその約款を手にしたからには、あとで聞いていなかった知らなかったという言い訳は通りません。その約款には解約手数料についての記載がこのようになっています。

(解約手数料又は延期手数料等)
第二十一条 当店が、解約手数料又は延期手数料を請求する場合は、その解約又は受取日の延期の原因が荷送人の責任によるものであって、解約又は受取日の延期の指図が見積書に記載した受取日の前日又は当日に行われたときに限ります。ただし、第三条第七項の規定による確認を行わなかった場合には、解約手数料又は延期手数料を請求しません。
2 前項の解約手数料又は延期手数料の額は、次の各号のとおりとします。
一 見積書に記載した受取日の前日に解約又は受取日の延期の指図をしたとき 見積書に記載した運賃の十パーセント以内
二 見積書に記載した受取日の当日に解約又は受取日の延期の指図をしたとき 見積書に記載した運賃の二十パーセント以内
3 解約の原因が荷送人の責任による場合には、解約手数料とは別に、当店が既に実施し、又は着手した附帯サービスに要した費用(見積書に明記したものに限る。)を収受します。
4 第一項ただし書の規定は、前項の費用の収受について準用します。

※引用元URL:国土交通省告示 標準引越運送約款
https://www.mlit.go.jp/common/000021071.pdf

なお、上記の内容は平成30年6月に一部改正されています。
※引用元URL:国土交通省「引越運送業の契約のルールが変わります!」 http://www.mlit.go.jp/common/001219884.pdf

平成30年6月の改正された標準引越運送約款によると、キャンセルや延期にかかる手数料は、引っ越し前々日のキャンセルが見積書に記載のある引っ越し料金の20%以内、前日のキャンセルで30%以内、引っ越し当日のキャンセルは50%以内の額を支払うことと決められています。

それ以前にキャンセルを申し出れば無料ということになります。これは、あくまでも依頼者の都合によるキャンセルの場合で、悪天候や引っ越し業者の都合ということなら手数料はかかりません。

「ただし、第三条第七項の規定による確認を行わなかった場合には、解約手数料又は延期手数料を請求しません。」とあるのは、

「当店は、見積書に記載した荷物の受取日の三日前までに、申込者に対して、見積書の記載内容の変更の有無等について確認を行います」という文章を指します。

これは、引っ越し当日の三日前、業者から依頼者へ確認の電話連絡を行い、その後変更がないか、予定通り引っ越しができそうかなどの確認をします。ここで荷造りが間に合いそうもないので荷造りのオプションを頼みたい、ソファを買ったので荷物が増えた、不用品処分も追加でお願いしたいなどの希望があれば対応することになります。

そして、この時点でキャンセルしたいことを伝えれば解約手数料はかかりません。そのために業者が三日前までに意思確認することがルール化されているわけです。もし、業者から三日前の確認の連絡がない場合、それ以降にキャンセルしても解約手数料がかからない旨が示されています。

しかし、依頼者がキャンセルしたいと思ったら、引っ越し業者からの確認の連絡を待たずに、早いうちにキャンセルを申し出るのが礼儀と考えます。

ダンボール料金など請求される可能性がある

引っ越し準備を進めていても直前でやむなくキャンセルしなければならない事態になることもあるでしょう。その場合は、引っ越し業者から提供されたダンボールにかなりの量の荷造りが終わっている場合もあります。

延期なら良いのですが、完全にキャンセルということになれば、そのダンボールやガムテープ、包装資材などは買い取ることになります。「ダンボール50箱無料プレゼント」などとなっていても、引っ越しをしない人に無料で誰にでも配布しているものではありません。

引っ越し業者独自のロゴやイラストが印刷されていてコストがかかっている分、その辺のホームセンターなどで売られているダンボールよりも高く請求されるかもしれませんが、それも致し方ありません。使っていない未使用分があれば、引き取ってもらえるか相談してみましょう。

また、すでにオプションでエアコンの撤去、引っ越しスタッフによる梱包などの見積書に記載のある有料サービスを行っていた場合は、その実費がかかります。

ダンボールの返却方法

全く未使用だったダンボールは、引き取ってもらえる可能性があります。ダンボールの束は自分で営業所に届けることも困難でしょうから、引き取りに来てもらえないか尋ねてみましょう。近くを通りかかったトラックが回収してくれることもあります。

その際の引き取り手数料は解約手数料に含まれるのか、上乗せされるのか、解約手数料が無料だったときは引き取り手数料が生じるのか、その辺は業者により対応が異なり、そこまでは標準引越運送約款には取り決めがありません。

ダンボールトラブルを回避するためには

実は、他にもダンボールに関するトラブルがあります。本人は契約したつもりがないのに、無理やりダンボールを置いていこうとする引っ越し業者の営業マンがいます。そのダンボールを巡ってトラブルになりやすいため注意が必要です。

強引に置いていく業者に注意

見積もりに来てもらって帰る際に、「荷造りは時間がかかるから早く取り掛かった方が良いですよ」と親切心を装ってダンボールを置いていくことがあります。また、「サービスのダンボールを置いていきます」と頼みもしないのに強引に置いていかれることもあるとか。

こんな業者は要注意です。ダンボールがあることで断りづらい、どこも似たような見積もり額だからダンボールのあるこの業者に決めよう、ダンボールを返しに行くのが面倒だからこの業者に頼むしかない、などの心理を利用して成約にこぎつけようとするからです。

依頼者の気持ちを無視した強引なやり方に甘んじてしまっては、この先も何かとカモにされる危険性があります。トラックに荷物が載せきれなかったから追加料金がかかる、荷物量が多かったので人を増やしたからその分の人件費をプラスした、など、どんな手を使ってくるかわかったものではありません。

正式契約後に受け取る

ダンボールを受け取ってよいのは、契約を交わした後です。複数社に見積もりを頼んでいる場合は、これから比較検討しようというときの結論が出ていない時点でダンボールを受け取ることは避けてください。

本命と思われる業者からでも事前には受け取らない方が無難です。その後の各社の値引き合戦により、思っていたところと違う業者に決まるのはよくあることですから。

ダンボールが無料になるのは、あくまでも引っ越しを契約して実際に作業を行った場合です。「不要だから引き取ってほしい」と言っても、買い取るように言われたり、営業所まで持参するように言われたり、送料を支払って送り返すように言われたり、高額な引き取り手数料を払って取りに来てもらったり、この手の事例が国民生活センターに寄せられています。

トラブル発生時の相談先

国民生活センターのホームページには、引っ越しのトラブルに関するさまざまな相談事例が掲載されています。代表的な例を挙げて対処の方法なども助言されていることがあるので、まずは確かめてみてください。

※参照URL:国民生活センター
http://www.kokusen.go.jp/

他にも、消費生活センター、運輸支局、トラック協会などに無料の相談窓口があります。
受付日や受付時間をホームページなどで調べてみましょう。

まとめ

引っ越しをキャンセルする際の解約手数料が三日前までは無料だと決められていても、キャンセルになりそうなときには早めに決断を下して業者に連絡しましょう。キャンセルではなく延期の場合は、業者によるとは思いますが、手数料を安くしてくれたり無料にしてくれたりする場合もあるようです。

当日都合が悪くなり、後日引っ越しをしなければならないなら、新たにまた複数の業者に依頼して見積もりからやり直しでは面倒です。できるだけキャンセルよりは延期にしてもらった方がダンボールも無駄にならないため、お互いに都合が良いはずです。