引っ越し挨拶の「のし」の書き方について

お中元やお歳暮を贈るときやギフト用品を買うと、売り場の店員さんに「のしはどうしますか?」と必ず聞かれます。

そんなときに、結婚祝、出産祝、進学祝などなら迷いなくお願いできますが、自分が引っ越しするときに近隣に配るものにものしが必要なの?と悩む人が多いようです。祝いごとでもないのにのしを付けていいの?そんな疑問にお答えします!

「のし」は何のためにあるの?

あらたまった場面や年上の人にものを贈るときにのしを付けることが多いような、と漠然としかのしの意味を知らない人もいるのではないでしょうか。

友だちの誕生日プレゼントにかわいくラッピングをしたあとに、のしをかける人はいませんよね。なんとなくは分かっているんだけど、いざその場面に直面すると、どうしていいか分からないものです。

「のし」の由来

「のし」は漢字で「熨斗」と書きます。贈り物の箱に「○○祝い」と結んだ紐が印刷されている紙がかけてありますが、あれは正式にはのしではありません。

あれは、熨斗紙(のしがみ)と呼ばれ、その右上に印刷されている折り紙のように縦長に包まれたネクタイの先のようなものに見覚えがありませんか?あれが熨斗なんです。というより「印刷のし」というものです。結婚祝いの祝儀袋でも見かけたことがあると思います。

本物の熨斗は、貝のアワビの肉を薄く切り、竹筒で何度も押して伸ばしたりをくり返し薄くした食べ物でした。アワビは長寿を意味する縁起物とされ、伊勢神宮に奉納される神様の供物としたり、乾燥させた熨斗を贈答品と一緒に贈るようになりました。

しかし、そもそもアワビは高価な品でもあるため、アワビに代わり黄色の細長い紙を包むような形になりました。

安い挨拶品でも「のし」は必要?

そんな立派なお祝いの品物というわけではないし、お祝いごとのある人に贈るわけでもないのに、引っ越しの挨拶の品物にのしは大げさなのでは、と考える人もいます。老舗百貨店のギフト売り場に行くと、「おのしはどうしますか?」と尋ねられ、「引っ越しの挨拶品で」と答えると、「ではこちらののしになります」と正しいのし紙を示してくれます。

数百円程度の品物でも、ちゃんと印刷をしてのしを付けてくれます。ということは、やはり引っ越しの挨拶でも、のしがあった方がよいということになります。

引っ越しの挨拶で使う正しい「のし」は

それでは、正しいのし紙とはどんなものになるのでしょうか。そもそも、のし紙に正しいものや正しくないものがあるの?と、疑問ですよね。一種類しかないと思っていた人は、いざ必要になったときに間違うことのないよう覚えておいて損はありませんよ。

水引の種類を間違えないこと

のし紙や祝儀袋の真ん中に、水平に何本もの紅白の線や紐が中央で結ばれています。その紐を「水引(みずひき)」といいます。その水引は、何種類かの結び方と、紐の本数が異なるものがあります。

蝶結び

何度あってもうれしいお祝い事なら、結び目は何度もほどいて結び直せる蝶結びのものを使います。これは広く一般的なお祝いに使われるものです。挨拶や御礼でもこのタイプになります。引っ越しの挨拶なら、この結びを使いましょう。

結び切り

ほどけないようにかた結びをしているものです。これは一度だけにしておきたいことの場面で使われます。結婚は一生添い遂げられるよう一回に、お見舞いなどでもくり返し病気をしないように今回の一回だけで終わらせたい、というような意味合いで使われます。ちなみに、水引が10本もの紅白や金銀のものは、婚礼のお祝いで使われます。

あわじ結び

かた結びよりも、結び目の紐が円を描いて模様のように互い違いに重なっているものがあります。それも、円の部分がアワビをあらわし、結び切り同様に一度きりの願いを込めたものです。これも婚礼にふさわしいものです。

地方によっては、店頭に黄色と白の水引が印刷されたものが並んでいることがあります。関西や北陸などで、弔事で使われることがあります。買う前に、使用目的を伝えてお店の人に間違いがないか聞いてみるとよいでしょう。

余計なお世話ですが、祝儀袋がド派手なものに対して中身の金額が少額では失礼に当たりますので気を付けてくださいね。

のしの書き方、表書きは何て書いたらいいの?

引っ越しの際にお世話になった近隣の人たちへ贈る挨拶の品、そして、これからお世話になる引っ越し先の近隣の人たちへ持参する挨拶品には、どののしで、どう記載したらよいでしょうか。同じ引っ越しの挨拶といっても、転出と転入では表書きが異なってきます。

転出の場合

特に親しかった人は別にしても構わないのですが、一般的な付き合いの人には、どこも同じ金額の同じ品物を持って回りましょう。のし紙の表書きには、「御礼」や「粗品」と入れます。

しかし、粗品じゃどこかの会社の販促品みたい、と思う人もいるようなので、感謝の気持ちをあらわしたいなら御礼がいいのではないでしょうか。今までの御礼の言葉と、どこに引越すか、いつトラックがくるか、などを説明しておくといいでしょう。

転入の場合

これからお世話になる近所の人には、最初の挨拶と第一印象が肝心です。手渡したときにすぐ分かるように、外側に「外のし」をかけてもらいます。そのときの表書きは、「御挨拶」や「ご挨拶」が一般的です。なるべく早めに家族全員で身なりにほんの少し気を使い、笑顔で挨拶を済ませましょう。

家族全員の名前を書いた方がいいの?

表書きの水引の下には、自分の苗字を書きます。スペースの関係もありますが、別にフルネームでなくても構いません。読み方の難しい苗字ならふりがなを振っておくとよいでしょう。夫婦二人の世帯や単身なら苗字だけで十分です。

引っ越した先が新興住宅地で、家族で住む世帯が多く、近隣も同じように子どもがいて、今後長い付き合いが予想される、という場所への引っ越しなら、家族全員の名前を書いていいと思います。

もしくは、表書きには苗字だけにして、子どものいる世帯には、別に手紙にして、「○○から引っ越してきました。○太郎(小学2年生)、○子(5歳)ともどもよろしくお願いします。」のようにしておいてもいいと思います。これも子どもの名前の読みが難しければふりがなを振っておきましょう。

次に会ったときに、早速「○○くん、○○ちゃん」と呼んでもらえたら子どももうれしいですよね。のし紙に名前を書いて配るということは、名刺のように面と向かって渡すことで顔と名前がその場ですぐ一致するという効果があり、覚えてもらいやすく、次に会ったときに名前で呼んでもらえますよ。

引っ越しの挨拶品は印象をよくしようと頑張って値段の張るものを購入する必要はありません。そのため、粗品なのにのしを付けるのは大げさではないか、と感じる人もいますが、これは名刺代わりの挨拶品なんです。よそのお宅に訪問するとき、初対面の人に名前を名乗るのと同じということですね。