ハウスクリーニング代の料金相場を理解して不正請求を防ごう

賃貸物件の契約を解除して退去した後、忘れた頃に入居していた部屋の清算書が届き、高額なハウスクリーニング料金に驚いた、ということがあります。銀行口座にわずかな敷金の返還があっても、振込手数料を差し引いた後の金額は数百円ということも。

このような時、「ハウスクリーニングってそんなに高いものなの?」と疑問に思うのも当然です。なぜこうなってしまったのか原因を探り、料金相場を理解して、不正請求を防ぎましょう。

入居時の賃貸借契約書を確認すること

賃貸の部屋を借りる時に、鍵の交換やハウスクリーニング代を借主が負担するとの説明がありましたか?不動産会社と大家と借主の間で取り交わした賃貸借契約書があれば、確認してみましょう。

借主が支払うことになっているか

賃貸借契約書など入居時に取り交わした契約書類に、「退去の際のハウスクリーニング代は、借主が負担すること」となっていれば、借主が支払うことになります。実はこの部分は、不動産会社や大家の考えにより自由に決められるため、退去時のトラブルとなることが多いです。

貸主と借主が折半で支払うのか、借主が全額負担するのか、修繕費とハウスクリーニング代をきちんと分けているのか、ハウスクリーニング時の掃除の範囲はどこまでなのかなどを、チェックしてみましょう。

ハウスクリーニングの金額の記載はあるか

賃貸募集広告をよく見ると、鍵交換費用15,000円、ハウスクリーニング代21,000円などの金額が記載されていることがあります。これは、借主が必ず支払うということです。このように最初に決められた金額が明記してあれば、それ以上の不正請求はないものと思われます。

しかし、入居時に一般的な掃除では落ちないような汚れをつけてしまい、退去までにきれいにできなければ、その分の特殊作業料金を当初のハウスクリーニング代に加算されないとも限りません。借りた部屋ですから、汚さないように気をつけて生活するのはもちろんです。

しかし何が起こるか分からないため、ハウスクリーニング代の負担範囲や、明記された金額以上に支払う必要があるのかなど、念のため聞いておくとよいでしょう。その時の回答次第では、後で何かと理由をつけて請求されそうか、もしかしたら不正請求されるのではないか、などの不動産会社の姿勢が見えてくるでしょう。

貸主が負担しているところもある

賃貸物件によっては、借主へハウスクリーニング代を請求しないところもあります。入居者が最低限の掃き掃除や拭き掃除をして室内をある程度きれいにして退去すれば、借主負担でハウスクリーニングする必要はない、としています。

次の入居者を募集するには、内覧時に部屋の状態をきれいにして印象をよくする必要があります。そのためのハウスクリーニングは、収入を得ることになる大家が負担すべき、という考えも一般的に浸透してきました。

しかし、これにも実は様々なケースがあります。前の入居者がきれいにして退去していれば、大家がさっと掃除をしただけで、プロの掃除業者に依頼していないこともあるようです。一方、どんなにきれいにして退去しても、必ず掃除業者のハウスクリーニングを依頼するところもあります。

署名・捺印があれば、支払わなければならない

上記のように、借主が支払わなくてもよい場合と支払わなければならない場合が混在するため、借りた側が混乱して問題になることもあります。

しかし、入居時の賃貸借契約書に自分の署名・捺印をしていれば、それは中身の記載内容をすべて承諾して契約したことの証になります。その内容が社会通念上あまりに不当なものでない限りは、それらの契約は有効になります。

ハウスクリーニングの料金相場は?

1平米につき1,000円〜2,000円程度の料金例が多くみられます。また、部屋数に応じる場合は、1部屋なら20,000円〜35,000円程度、3部屋なら50,000円〜90,000円程度が目安と言えるでしょう。しかし実際には、これよりも安い業者もありますし、もっと高額請求されることもあります。建物の価値や築年数、住む地域によって、かなりの変動が見られます。

退去の時の部屋に何も置いていない状態のハウスクリーニングと、普段人が住んでいる時に定期的に利用するハウスクリーニングとは、作業内容が違います。自分で調べる際も、それらを混同しないようにしましょう。

部屋数や広さにより金額が決まる

大体の料金設定の基準となるのは、部屋数や面積です。これにプラスして、どこまでどの程度のクリーニングをするかにより、かなり料金が違ってきます。全体的な簡単な掃除なら、時間もかからず特殊な洗剤や技術者も必要とせず、基本料金内の安い金額で抑えられるでしょう。消毒や汚れ防止のコーティング作業などが入れば、さらに高額になります。

汚れ具合によっても加算料金が発生

たとえば、揚げ物をよくするキッチンと、ほとんど自炊をしたことがないキッチンでは、汚れ具合が格段に違います。入居者がある程度の油汚れを掃除していても、プロの業者が時間をかけて丁寧に作業をすることになるでしょう。

壁紙のクロスにしても、拭き取るだけできれいになるものがあれば、そうでないものもあります。毎度全面張替えで貸し出すのか、きれいに掃除して貸し出しているのか、どこまで行うのかは大家の考えによります。

デザイナーズマンションなどの賃貸なら、物件の価値を高めるためにも、徹底的にきれいにするでしょう。その反面、安い家賃で貸し出している古い木造の学生アパートなら、ハウスクリーニング代も安く済むでしょう。

という訳で、いくら相場があったとしても、それぞれの事情により、ハウスクリーニング業者の提示する見積もり料金は変わってきます。しかし、不動産会社が提示してきた請求額が、どう考えても高いだろうと思えるなら、そこで了解してはいけません。

敷金でまかなえないほどの金額を請求されたら?

入居時に支払う敷金は、住んでいるうちに自分が壊したり汚したりしたものに対して、原状回復のための修繕費として退去時に使われるものです。部屋の広さに応じ、大体このぐらいあればまかなえるだろうという金額を設定しています。

部屋数の少ない物件なら敷金1か月、家族で住むための広い一戸建てなら2か月以上、室内飼いのペットがいれば3か月などです。つまり、多めに見積もってもこの金額内で相殺できると仮定している訳です。そのため、これよりも多く請求されるのは、明らかにおかしいと言えるでしょう。

退去時の立会い確認のチェック事項は?

退去の際の不動産会社との立会い確認では、どうなっていましたか?入居時の状況表と照らし合わせて、傷や汚れを一つひとつチェックしてリストに記載したり、写真で確認したりしていましたか?本来ならチェック表で確認しつつ、
「この傷はどうやってついたか覚えていますか?」
「目を離した隙に子どもがはさみでやってしまって」
「一部のリペアでいけると思います。大体○円です」
などと、お互いに確認し、了解を取りながら進めるものです。

そのような良心的な不動産会社なら、ハウスクリーニング代と修繕費をきちんと分けて、明細が分かりやすいように提示してくれるはずです。逆に、すべてが合算された訳の分からない高額な請求は、疑ってかかりましょう。どこをどう掃除したのか、明細を提示してもらうよう交渉しましょう。

業者の見積書を見せてもらおう

良心的な不動産会社なら、どこのハウスクリーニング業者に頼んで、どんな見積書をもらったかを提示してくれます。内装工事業者がハウスクリーニングも請け負っていることもありますが、そんな場合でも、ちゃんと内訳を記載してあるのが当然です。

そして、修繕費用がどのくらいかかったか、その費用は全額自己負担になっているのか、大家との負担割合は、など説明を求めましょう。

すべてを借主が支払わなければならないのか

たとえば畳は、普通に生活していても上に家具を置けば、置いたところとそうでない場所の日焼けの境目がハッキリとついてしまいます。だからといって、畳の上にじゅうたんなどを敷いて日焼けを防ぐようなことは、通常はしません。ダニの温床にもなりやすいため、健康面でも心配です。

このように普通に生活をしていても徐々に古くなっていくものを、経年劣化や通常損耗と言います。
これらに関しては、借主に修繕の義務はありません。貸主である大家が対応することになっています。

他の修繕費用が加算されていないか

自分が住む前から何年も使われてきた設備が壊れたとしても、たまたまその時に住んでいた借主が修理代を全額負担することはありません。居住年数や設備の耐用年数などを考慮し、大家との負担割合を算定し、お互いで負担することになるでしょう。これらの修繕費がハウスクリーニング代に含まれていないか、確認しましょう。

納得がいかなければ合意してはいけない

ハウスクリーニング代の不正請求や敷金返還のトラブルは、よく起こることです。実際に国民生活センターのサイトなどでは、相談内容の事例が数多くみられます。国土交通省では、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公布しています。

参考になるようなものがあれば、不動産会社に提示して尋ねてみるのもよいでしょう。話にならないようなら、地域の消費生活センターなどの専門窓口へ相談することをおすすめします。そのような場合、案外過去にも、別の人から相談があった不動産会社かもしれません。担当者が仲立ちをして電話をしてくれるだけで、あっさり解決することもあるようです。

まとめ

昨今では、SNSなどで悪い評判はあっという間に広まります。それにも関わらず、危機感を持たずに、借主から不正に高額請求しようとする悪質な会社もまだまだ存在します。また、やむなく、古くから付き合いのある大家の言いなりになっている場合もあります。

内訳も分からない請求書がきたら、まずは何にどれだけかかっているかを明確にしてもらいましょう。料金相場を知るなど、借主もそれなりに知識を持って対処することが大切です。