警察の戸別訪問調査での巡回連絡カードの作成は拒否できる?

何の前触れもなくいきなり我が家に警察官が訪ねてきたら、何も悪いことをしてなくても驚く人が多いのではないでしょうか。近隣で何かの事件が起きたのか、何かの聞き込み捜査か、まさかあの時の……なんて、いっぺんに頭の中で目まぐるしく思いを巡らせてしまいます。

そういう用件で訪問することもあるかもしれませんが、引っ越し後に警察官が訪ねて来るのは、普通は巡回連絡のためです。

警察の戸別訪問調査について

日中在宅している時間が長い人は、警察官が戸別訪問に来た経験がある人は結講多いでしょう。引っ越してすぐの場合や、何年かに一度など、担当地区の交番や駐在所の警察官が訪問することがあります。家庭状況に変わったことがないか、防犯面などで不安に思うことがないか、などを聞いて回るもので、巡回連絡と呼ばれます。

その際に、各家庭に1枚ずつ巡回連絡カードを作成します。このカードにどんなことを記入するのか、巡回連絡カードを作る目的は、その場ですぐに書かなければならないものなのか、などについて解説します。

巡回連絡カードを作成する目的

警察官は台帳のような分厚いファイルを持って回っています。そこには、同居する家族の全員の氏名と年齢、続柄、電話番号、勤務先や学校、親族の緊急連絡先などが書かれたB6程度の大きさのカードが束になっています。これが巡回連絡カードと呼ばれるものです。

以前記入した内容とその後変更がないか、一軒ずつ戸別訪問しながら話をして、訂正事項を書き込みながら新しい情報に更新しているわけです。引っ越して転入してきた場合、以前の住人と変更があったことは表札で分かります。または、引っ越しで新しい転入者が来たことが分かり、後日そこだけに訪問する場合もあります。

新しいカードを手渡されてその場で記入するように促されたり、警察官が聞き取りながら記入したり、忙しいようなら、「あとで記入してもらって後日再訪問するか交番に届けてほしい。」と言われたり、さまざまなケースがあるようです。

この巡回連絡カードを作成する目的は、地震や火災などの被害の確認や、留守中の空き巣被害など非常時に連絡が取れるようにするためです。

作成は拒否できるの?

昨今は個人情報があらゆるところから漏れる危険性があるため、できるだけ漏らしたくないと考える人も多く、訪問した警察官が偽物ではないかと用心する人もいるようです。かと言って警察手帳を見せてもらっても本物か偽物かは判断できないでしょう。

そんなときは、カードだけ受け取っておいて、後日交番に届けますと言っておけば良いと思います。その後提出するかどうかは個人の自由です。提出しなかったからといって罰せられることもありません。あくまでも任意です。

しかし、カードを渡されたその場で断ってしまうのは考えものです。非協力者として記録に残るため、何か特別な訳でもあるのかと、あらぬ疑いをかけられてしまうこともあり得ます。実際、引っ越して早々訪問するのは、指名手配犯ではないか、問題を起こしそうな人物ではないか、などを確認する目的もあります。

巡回連絡が役に立ったケース

警察では必要だと思うからこそ自分の足で各家庭を戸別訪問して巡回連絡カードを作成しています。万一の際にはこの巡回連絡カードがあれば必ず活きてきます。巡回連絡カードが役に立った一例を紹介します。

子どもが1人で公園に向かう下り坂で、自転車で転倒して泣いていたため、通りがかりの人が救急車を呼んでくれました。ところが救急は着いていても、保護者が到着するまでその場を動けないことがあります。

もちろん命にかかわるような重傷や重体であれば緊急で搬送してくれますが、そのときの救急隊員の所見は腕の骨折と、頭を打っているかもしれないということでした。意識もしっかりしているし、小さな子どもだから親が近くに住んでいるはずと交番に問い合わせ、親の到着を待つことにしたようです。

この家庭は警察に巡回連絡カードを提出してあったため早急に連絡が取れ、母親がすぐに来て救急車に同乗して無事希望する病院に運んでもらえたようです。もし、ここで親と連絡が取れなかったら、救急車は止む無く救急病院に搬送するでしょう。もし手術が必要な事態なら、保護者の同意も得られずどうなっていたでしょうか。

子どもが名乗ることができなければ近隣の小学校に問い合わせて該当の子どもを知っているか尋ねることになるでしょうし、親はいつまで経っても帰ってこない我が子を心配して、あちこち探し回っていたかもしれません。

このように、子どもや高齢者がいる家族なら、何かあった際の緊急連絡がすぐに取れるため、巡回連絡カードは提出しておいた方が何かと安心です。また、一人暮らしの人、特に女性は地元の警察官と面識が合った方が何かと心強いと思います。

何か不安なことがあればすぐ相談できるような関係性が保てると良いですね。住民の不安の声を受けて帰宅時間頃にパトロールを強化してくれることもあります。また、不審者情報などがあったときに、ポストに「○時に付近を巡回しました」というメッセージが入っていることもあります。

自分の顔を知ってくれていて、何かあったときには家族に連絡を取ってくれるという安心感が得られるのは心強いと思います。

まとめ

警察官が制服を着て突然玄関先に現れると驚くと思いますが、巡回連絡カード作成のための戸別訪問があると知っていれば冷静に対応できるでしょう。自分だけが疑われたり怪しまれたりしているわけではありません。

昨今は、どこで天災が起こるかわからないし、盗難などの事件に遭遇することもあり得ます。万一のときを考え、拒否せずに巡回連絡カードは提出しておいた方が無難です。